彼と私と秘密の欠片


……でも、どうして誠司さんはここに暮らしてないんだろう。

ふとそんな疑問が浮かんだ。


誠司さんは、きっと毎日、昨日のようなバタバタと仕事帰りに慶太君と栄太君を迎えにきて、家に帰って……わざわざ大変な生活をしているんだろう。


誠司さんの仕事は、土日が休みとか、そんな決まった休みはない。

忙しい時は、週一で休みがあるかないかだって言ってたことがある。

誠司さんの仕事の予定を詳しく知ってるわけじゃないけど、一日中休みの時なんて本当に少ないはず。


そしてその時も、慶太君と栄太君はここに預けられているんだろう。


慶太君と栄太君は、アパートで過ごす時間より、ここで過ごす時間の方が多いんじゃないだろうか。


だとしたらいっそのこと、誠司さんもここで暮らしたらいいのに……

そしたらきっと、誠司さんの負担だって、少なくなるし……



「雛子ちゃん?」

郁子さんの声で私は我に返った。


「あっ……はい」


「どうかした?」

郁子さんは不思議そうに私のことを見てきた。


「いえっ。何でもないです」

私は首を横に振った。


私は何勝手なこと考えてるんだろ。

こんなの、誠司さんの……誠司さんの家のことなのに。


そんなの、きっと、何か理由があってのことに決まってる。


「そう? じゃあ、早速作りましょう」

郁子さんはにっこりと笑って私を台所へと促した。