郁子さんに連れてこられ、私は誠司さんの実家へ来た。
まさか、二日連続でくることになるなんて。
しかも、昨日初めて知ったのに、今日は家の中にまで上がっている。
本当に、いいのかな。
今日は誠司さんもいなくて、誠司さんもこのこと知らないし。
ていうか、今すっごい気まずいのに。
もし、誠司さんとここで鉢合わせになったらどうしよう。
今の時間は、午後六時半過ぎ。
昨日、誠司さんにここに連れてこられたのが確か八時半前だったと思う。
誠司さんの仕事自体が、八時頃までだから、八時になる前に帰れば、何とか鉢合わせは免れるかな?
「あら、栄ちゃん、おっきした?」
玄関で、郁子さんがベビーカーの中を覗きこんで言った。
さっきまでぐっすりと眠っていた栄太君が、きょとんとした表情をしていた。
ぱっとこっちを見た栄太君に、何となく私は身構えてしまう。
……だって、昨日あんなことがあったわけだし。
でも、栄太君は私のことを覚えていないのか、特に何の反応も示さなかった。
それはそれでちょっと寂しいけど。
郁子さんはベビーカーから栄太君を抱き上げた。
「あ、栄ちゃん、オムツ取り替えないとねえ」
郁子さんが栄太君のお尻を触りながら言う。
栄太君は、郁子さんの腕に抱かれて、その手は、郁子さんの胸に触れ、顔を押し付けようとしている。
まるで昨日していたことと同じだ。
誠司さんも言っていた通り、やっぱり女の人に対してはこういうことしちゃうみたいだ。
「雛子ちゃん。これ、台所に持って行ってくれる? そこのドアから入ったら分かると思うから」
栄太君を抱っこして片腕が塞がった郁子さんは、ベビーカーにかけていた買い物袋を、私に差し出した。
「あ、はい」
とりあえず、受け取って、私は靴を脱いで上がった。


