私の声に、慶太君も反応して私を見た。
そしてすぐに嫌そうな顔をして、一緒にいた女の人の後ろに隠れる。
「慶ちゃん?」
女の人が呼ぶと、慶太君は顔を半分出して、じとーっと私を見てくる。
なんか、デジャヴ?
「どうしたの? 慶ちゃん」
女の人は、五十代前後の雰囲気の人で、ベビーカーを押していた。
そしてそのベビーカーの中では栄太君が眠っていた。
さっき自分のことを「おばあちゃん」って言ってたし……この人って、もしかして、もしかしなくても……
「あの……?」
見つめ合う(?)私達を見て、女の人は明らかに私の方を不思議そうに見ていた。
そりゃそうだ。
ていうかこれって、私、危ない人みたいになってんじゃん。
振り返っていきなり「あ!」なんて言って、しかも慶太君はこの様子だし。
「あの……初めまして。私、島田雛子っていいます。えっと、誠司さんの……時枝誠司さんの……」
とりあえず名乗ったはいいものの、それから先どう言ったらいいのか分からない。
知り合い……でいいのかな。でも、あまりにもはっきりしなさ過ぎだし……
「えっと……その、お店の常連なんです。それで誠司さんにはよくして頂いてて……」
苦し紛れに出たのは、そんな言葉だった。
昨日、誠司さんが慶太君に言ってたことと同じことを言ってしまった。
昨日は、もうちょっと違う言い方をしてほしいと思ったのに。
そりゃあ、あれから更に微妙になったっていうのもけど……
結局、私と誠司さんは、そんなに大した関係じゃないんだ……


