でも、もしそれが私のことを考えてのことだったとしたら……
「……そういう優しさも、私のツボだったりするんだよね」
自分でも、バカだなあって思う。
ただの自惚れだけど、どんなことでも、誠司さんが私のことを考えてくれてるんだと思うと、嬉しくなる。
そして、どこかに可能性を見出してしまうんだ。
「雛子、あんたドM?」
「なっ……失礼な!」
南が少し哀れんだ顔で見てくるので、私はムキになって言い返した。
別にそんなつもりじゃないし!
「別にいいけど。どっちでも」
……こんな風に言う南は絶対ドSだ。
「でもまあ、雛子がどうしたいのか、じっくり考えたらいいんじゃない? 私とか、他がとやかく言ったって、結局は雛子次第なんだから」
「うん……」
やっぱり、結局はそうなるんだ。
私のことだから、私がちゃんと考えて答えを出さないといけない。
「……あ、もうすぐバイトだ」
南が腕時計を見て言った。
「もうそんな時間だった? そろそろ出ようか」
私達は、そこで話を終わらせて、店を出た。
「なんか……ごめんね。今日は私ばっか喋っちゃって」
私と南は反対方向に行く。だから店を出たところで私は言った。
いつもは、会った時にお互いのことを話すのだけど、今日は、私のことだけを話して時間が経ってしまった。
南には、聞いてもらってばっかりで申し訳ない。
「いいよ。私の方は相変わらずだし。ていうか、ちょっと面白かったし」
「……南。人の恋路を面白いとか言わないでよ。真剣なんだから」
「冗談半分でしょ。気にしないの」
ってことは、半分は本気なのか。
あ、でも半分はちゃんと考えてくれてるってわけだよね。
それならいいってことにしておこう。
「私も、ちゃんとしたことは言えないけど。話聞くくらいならできるから。また何かあったら話してよ」
南の一言に、安心できる。
やっぱり南は、頼りになるし、信用できるんだ。
「ありがとね、南」


