私は感心してしまった。
「凄い、南。こんな短時間でそこまで考えたんだ」
当事者である私でさえそんなところまで考えていなかったのに、今話を聞いただけの南の言うことの方が、かなりリアルだ。
「そんなことまでって……普通は雛子が予想しとかないといけないことでしょ」
南は私に対して唖然としている。
「そんなこと言われても……昨日いきなり知って、そこまで考える余裕なんかなかったし」
……いや、よく考えたら、私、誠司さんと付き合ったらなんて考えたことなかったかもしれない。
今回の、誠司さん事情を知る前からも……
誠司さんが私のことを好きになってくれたら、凄い幸せだなーって……きっとどんなことがあっても、幸せだなーって思ってたから。
具体的にデートしたら、とかあんまり考えたことなかったかもしれない。
こんなんだから、子供のことも含めて、なんて尚更。
「まあ……雛子の立場から言えば、そうなのかもね。でも、そのうち考えずにはいられないことだと思うけど。雛子が諦めないんだったら」
そう言われて、私には返す返す言葉がなくなった。
諦める、か。
やっぱり、それが一番なのかな。
「多分だけどさ、誠司さんは、雛子のこと考えてずっと断ってきたっていうのもあるんじゃないの?」
「……うん」
南の言うとおり、誠司さんは、自分の事情のことを考えて、私のことを振ってたんじゃないかと思う。
『雛ちゃんには、俺なんかよりもいい人がたくさんいるよ』
誠司さんに振られるたびに言われた言葉。
多分、自分にはこんな事情があるから、普通の恋人のようには付き合えないという意味だったんじゃないかと思う。


