南は大きなため息をついた。


「雛子ならそう言うと思ったよ」

とても呆れたような言い方。


「雛子の『誠司さん熱』はすごかったもんね」


だけど、流石親友。

私の思っていることなんて、お見通しのようだ。


「ねえ、南。南だったらどうする?」


こういう時、他の人はどうするんだろう。

振られたって諦める?

それとも……


「……私は、実際に雛子の立場じゃないし、今の雛子みたいな経験したことないけど」

南が前置きのように言う。


「私の立場で言わせてもらうと、諦めた方がいいと思う。その方が、さっさと楽になれるだろうし」

やっぱり考えていたことではあるけど、南が言うとずっしりとくる。


「もし仮に、付き合うとかになっても、大変だと思うよ。ただのバツ1バツ2ってわけじゃない、子持ちなんだから」

そこから南は、私が考えつかなかったことも話し出した。


「ただでさえ、忙しい店の美容師で休業日以外ほとんどない人なんでしょ? 休みの日なんて子供に拘束されるに決まってるし。

そうなったら休日のデートなんて出来ないよ。出来たとしても子供同伴の午後五時解散の健全デートか。行くところも限られるだろうし。二人っきりになれる場所なんかないよ。

それに、もし付き合うとしたら、十中八九結婚もセットで考えないといけなくなるわよ。まあ、それはそれで魅力的だし、女としては幸せかもね。

だけど、初婚で二人の子持ちよ? 耐えられる? それこそ結婚したての新婚ムードはないだろうし、ハネムーンも二人で海外にいけるかも微妙だし。

それに、やっぱり自分のやりたいことをやる時間だって削られるだろうし。もし仕事とかしたくても、厳しいと思うよ。家庭に拘束されるだろうし」