「へーえ。なるほどねえ」
次の日の夕方、私は親友の南とカフェで話していた。
南は、中学からの付き合いで、高校もその後の進路も全く違うけど、未だに連絡を取り合っていて、こうしてたまに会ったりする。
お互いに何でも言い合える仲で、心が許せる一番の親友。
だから、南には、私が誠司さんという人のことが好きで、すでに二回振られてることも話した。
それから、昨日のことも……
南は口が堅いから信用して、ほとんどのことを話した。
「失恋した上に胸まで見られて、大・玉・砕! ってわけね」
何でも言い合えるだけに、南の言葉はズバッとしている。
「ちょっと! そんなこと普通の声で言わないでよ! それに、玉砕ってわけじゃないし!」
「雛子の方が声おっきいって。ていうか、玉砕じゃないってどういうこと? 振られたんでしょ?」
「玉砕とか振られたとか、何回も言わないでよ」
自分以外の人に何回もそう言われると、現実味を帯びてしまって何だか落ち込む。
「……聞かなかったの。ちゃんと」
ため息をついて、私は昨夜のことを話した。
昨夜、あれから帰ろうとした時。
「今日は本当にごめんね、雛ちゃん」
玄関先で誠司さんに謝られた。
「ううん。大丈夫」
あんなこと(胸を見られたこと)があったもんだから、私達はお互いに気まずくて視線を合わさないようにしていた。
「もう遅いけど、大丈夫? お家の人とか……」
「うん。遅くなるって連絡はしたから」
「そっか……ごめんね、送っていけないけど……」
誠司さんが申し訳なさそうに言った。
「いいよ。だって、しょうがないもん」
慶太君と栄太君が居るから、二人を置いて家を出ることはできないし、かと言って、こんな時間に二人一緒に家を出ることもできない。
だから、しょうがないんだ。
「あの……雛ちゃん」
誠司さんが言いにくそうに口を開いた。
「こんな時にいうのもおかしいかもしれないけど……でも、ちゃんと言ってなかったから……その、返事を」
返事という言葉を聞いただけで、それが私の告白に対するものだということが分かった。