「むうー」

栄太君が手すりにしゃぶりついている。


「ああ、こら」

誠司さんは栄太君の様子に慌ててベッドから抱き上げる。

その時に、よだれが栄太君と手すりとの間で糸を引いていた。


「あーあー。ベトベトにしちゃって」

誠司さんはティッシュを取って栄太君の口周りと手すりを拭いた。

当の栄太君は、今度は指を口に入れてしゃぶっていた。



「お腹すいてるんじゃないの?」

栄太君の様子を見て何となく思って言った。


「うん。多分そうだと思う。でも、栄太は実家で済ませてるからなあ。いっつもこうなんだよ。栄太、食いしん坊だから、俺達が食べてるの見てお腹すいたんだな」

そんなことをいいながら、誠司さんはベビーベッドの傍らに置いていた箱からおしゃぶりを出してくわえさせる。


「ううー」

おしゃぶりをしていても、もぐもぐと口を動かして、栄太君が物欲しそうに誠司さんを見ている。


「……どうしよっかな。果汁だけでもちょっとあげようか」

独り言のように誠司さんが言うと、栄太君は果汁という言葉に反応してか、目を輝かせている。


「よし。じゃあちょっとだけな」

誠司さんも栄太君の様子には負けたようで、しょうがないなあと言いながら、栄太君を誠司さんが座っていた座布団の上に栄太君を座らせた。


「ごめん、ちょっと栄太のこと見といて」


「うん」


「慶太も、栄太のことちゃんと見とくんだぞ」


「わかってるよー」


私と慶太君に栄太君を任せると、誠司さんは台所に向かった。