ほんの少しだけ、胸が痛い。

誠司さんから、そんなことを聞くのは、初めてだったから。



「彼女は、子供のことも、理解してくれてて、慶太もすごく彼女に懐いててさ。だから、彼女となら、今度はちゃんと家庭を築いていけるんじゃないかって思った。……でも、流石に迷ったけどね」

こっちはバツ1の子持ち。向こうは初婚で、まだ若いのにいきなり子持ちになるわけだから。


でも、彼女が言ってくれたんだ。


『誠司にとって、慶太は一番大切なんでしょ? それなら私にとっても一番だよ。……慶太と誠司。一番が二人居るって、私はすごく幸せものだな――』


「俺は……嬉しかった。上手くいえないけど、でも、すごく嬉しかったんだ」


誠司さんの目には、耳には、心には……

その奥さんが言った、その姿、その声、その言葉が、しっかりと残ってるんだろう。


「それで、彼女と結婚したんだ。……俺は一度失敗してるし、もう二度と、同じことのないように……彼女だけは大切にしようって、誓ったんだ」


『誓ったんだ』


その言葉がとても重かった。


私なんかが踏み込めないものなんじゃないかってくらい……


「だけど、彼女は……居なくなった」

その声は、震えていたような気がした。


「死んじゃったんだ」


その声は、とても冷たく響いた。