「とうちゃん! ウルトラマンみていい?」
どこかに消えていたと思っていた慶太君が現れて、誠司さんに体当たりするようにしてぶつかっていき、足にしがみついた。
「んー? 慶太、ちゃんと手洗ってうがいしたか?」
「したよ!」
「ちゃんと石鹸で洗ったか?」
「うん! ほら」
慶太君は誠司さんに向かって両手を開いて伸ばしている。誠司さんがかがんでそれに鼻を近づけている。
多分、匂いで確かめているんだ。
「よし。それじゃ見ていいぞ」
「やった!」
誠司さんの許しが出て、慶太君は嬉しそうにテレビに向かった。
やっぱり子供なんだなあと思って、微笑ましい。
そして、誠司さんが洗濯物を外してくのを見ながら、何かイメージにないなあと思ったり。
なんていうか、誠司さんにはあんまり家庭的なイメージはない。
というか、私の中の誠司さんはあまり生活感というものがなかった気がする。
美容師っていう職業的にそうなのかもしれない。
生活感たっぷりの美容師がいるかっていったら、やっぱり居ないと思う。
それに、生活感っていうのは、その人に深く踏み入らなかったら分からないものでもあるし。
誠司さんのことは好きだけど、家でどんなんだろうとか、そんなに想像したことなかったしなぁ……
「さて、と……晩御飯の準備しないとな」
洗濯物を全部外した誠司さんは、ふうっと一息ついて言った。
「あ……なんか手伝おうか?」
手持ち無沙汰な私は誠司さんに聞いた。
「それじゃあ、頼もうかな」
誠司さんが、そう言ったから、私と誠司さんは台所に向かった。


