誠司さんは、時枝誠司さんといって、二十六歳の美容師だ。
初めて会ったのは、誠司さんが働いている店に、私が客として行った時だった。
その時はまだ、誠司さんは店に来たばっかりだと言っていて、この店で初めてカットするのが私なのだと言っていた。
二十六という年齢の割には幼い顔をしていて、笑うと八重歯が見えるのが可愛くて、私は誠司さんに一目ぼれしてしまった。
それから月一回は誠司さんの店に行き、客には教えられないのだと言った携帯の番号とメルアドを無理矢理聞き出した。
うざいぐらいにメールをして、やっとのことで名前を呼んでもらう仲になり、たまにお茶をしたり、一緒にランチをするようになった。
誠司さんは、話してみると、やっぱり大人の男の人で、かっこよくて、優しくて、私は、一目ぼれした時よりももっと好きになっていった。
初めて誠司さんに告白したのは、三ヶ月前。
その時は、まず驚いた顔をして、すぐに困った顔をして笑っていた。
そして
「俺なんて、雛ちゃんより六つも上だし……雛ちゃんにとっては俺はおじさんだよ。雛ちゃんは、同い年ぐらいの子と付き合った方がいいよ」
と言って、遠まわしに断られた。
私は年の差なんて関係ないと言ったけれど、誠司さんは曖昧に誤魔化すだけだった。
それでも私は諦めることはできなくて、本気で誠司さんのことが好きなのだとアピールするために、それまで以上に熱心にメールを送ったり、食事に誘ったりした。
で、辛抱できずに二回目の告白をしたのが一ヶ月前。
その時もまた、誠司さんはまず驚いた顔をして、今度は
「雛ちゃんは俺にとっては、妹みたいなもんだから……だから、付き合えないかな」
と言って、断られた。
だからといって、やっぱり諦められなかった。
妹みたいだからってなんだっていうの。
実際に妹ってわけでもないんだから、許されないことをしてるわけじゃないんだし。
今度は、私がちゃんと女として見られるように、アピールしようとした。
だけど、また耐えられなくて、私は三度目の告白に挑んだ。
今度は、もう最後かもしれないという覚悟までして。