誠司さん達の部屋に行くのに、慶太君が先頭で、誠司さんがそれを追い掛けるように歩くのに、私はついていった。


「でも、誠司さん。これぐらいの距離だったら別に車使うほどでもないんじゃない?」

ふと思ったことを、私はそのまま口にした。


誠司さんの実家からここまで、車で七、八分ぐらいだ。
特に急な坂道とかはないし、歩いたら多分二十分ぐらいだろう。

それなら何も車じゃなくてもってふと思ったんだ。


「そうなんだけどねえ。特に朝が時間ないんだよね。慶太を幼稚園まで送って、それから栄太を実家に預けて、俺はそれから仕事だから」


「あ、そっか」


「それに、帰りも遅くなるからね。この時間帯、慶太と栄太には遅いんだよね」


今、八時半前。

私にとっては、まだまだ夜が始まったばっかりで、全然遅いという感覚はないけれど、幼稚園児や赤ちゃんにとっては、確かに遅いよね。


それにしても、やっぱり誠司さんは、子供のことが一番なんだな……


「ここだよ。ちょっと待って。鍵開けるから」

誠司さんは『時枝』と書かれている表札の前で立ち止まり、ポケットの中から鍵を取り出した。

ドアを開けると、一番に慶太君が入っていった。


「どうぞ。上がって」


「うん……お邪魔します」


いよいよ誠司さんの家。緊張しながら私は誠司さんの部屋の中に足を踏み入れた。


誠司さんは、部屋に上がる時に、慶太君が適当に脱いだ靴を揃えて、自分が脱いだ靴も揃えていた。

それを見て、私はいつもはそんな習慣はないけれど、きちんと揃えておいてから、部屋にあがった。


誠司さんの部屋は、2Kでそれほど広い部屋ではなかった。でも、誠司さんと、小さな子供二人では十分なくらいなのだろう。


何気なく部屋を見回して、ぎょっとしてしまった。

窓際に、洗濯物が干してあった。しかも、下着。


子供物の小さなパンツと、大人物のトランクスが干してあった。

これって、ちょっと……


「ああ、ごめんね。見苦しいもの見せちゃって」

栄太君をベビーベッドに乗せて、誠司さんは慌てて干してあった洗濯物を取る。

流石に恥ずかしそうだ。……私も恥ずかしいし。