……いきなり家に誘われちゃった。
昨日までの私なら、多分、天にも昇る心地になって、ときめいていたに違いない。
だけど、誠司さんの家ということは、誠司さん親子の家ということだ。
それが分かってしまうと、ときめきは無くなっていた。
「……いいの?」
何となく、聞き返してしまう。
誠司さん一人の家、というわけではないと、いくら一緒に住んでいるのが子供でも、遠慮してしまう。
「うん。いいよ。うち、今日はカレーなんだ」
誠司さんはそう言ってニコっと微笑んだ。
正直、カレーだから何っていうわけでもないんだけど……
でも、誠司さんの笑顔にはキュンとときめいてしまった。
やっぱり、誠司さんへの気持ちは簡単に無くなりはしない。
「じゃあ……お邪魔します」
まるでカレーに釣られるような感じで、私は頷いた。
私は誠司さんについていって、ガレージに来た。
ガレージには二台の車が停まっている。
一台は誠司さんの実家のもので、もう一台が誠司さんのものだという。
いつも誠司さんの家からこの実家まで車で来て、車はここで停めていくらしい。
店には従業員用の駐車場はなくて、近くにあるとしたらコインパーキングしかないから、節約してるんだと、誠司さんは笑った。
「それで、雛ちゃん、後ろに座ってくれる? 助手席の後ろ」
誠司さんが車の鍵を開けながら言った。
「うん」
細かく指定するなぁと思いながら、私は言われたところのドアを開けた。
すると、運転席の後ろの席にチャイルドシートが置いてあった。
誠司さんはそこのドアを開けて、栄太君を座らせて、ベルトを締めている。
ふと助手席の方を見ると、そこにもチャイルドシートが置いてあって、慶太君がそこに乗り込んでくる。
ああ、それで私が座る席も決まるのか。