「あらまぁ。栄ちゃんったら……」
郁子さんは苦笑しながら栄太君のことを見ている。
まあ、可愛いから許されることだけどね。
「あ、そうだ。これ、よかったら……」
手に持った、ゼリーの入ったバックのことを思い出し、私は郁子さんに差し出した。
「あら、何?」
「ゼリーです。作ってきたんで、よかったら食べて下さい」
郁子さんに渡しながら言うと、郁子さんはうれしそうに笑顔になった。
「あらぁ。ありがとう。なんだかごめんなさいね。いっつも来る時に何か持ってきてもらって……」
「いいえ。好きでやってることなので……気にしないで下さい」
それに、少しだけ賄賂のような意味も含まれているから、あんまり純粋に喜ばれると、胸が痛む。
勿論、お菓子作るのは得意だし、楽しいから好きでやってることっていうのはほ本当なんだけどね。
「あ、ちゃんと冷えてる」
郁子さんは中身を見て言った。
「はい。一応、冷蔵庫で冷えてるのを持ってきて……保冷財も入れてきたんでまた冷たいと思います」
「そう。じゃあせっかくだからすぐいただきましょ」
郁子さんはダイニングのテーブルにゼリーを出していく。
その時、ふと慶太君の方を見ると、目が合った。
「こんにちは、慶太君」
ちょっと遅くなったけど、私は笑顔で慶太君に挨拶をした。
つい三日前に、一緒に遊んで仲良くなったんだもん。
きっと、ちゃんと挨拶してくれるはず……


