彼と私と秘密の欠片


慶太君とのことには、正直なところ、不安もある。

慶太君が心を開いてくれたと言っても、それはキャッチボールをしてた時だけで……

私が勝手に思ってるだけかもしれなくて……


でも、今日会っても仲良く接することができれば、もう紛れもなく私は慶太君に認められた(?)ということ。

これからはもう何の気兼ねもなくなく誠司さんに……


「これで誠司さんに猛アピールしてラブラブカポーになれること間違いなし! とか思ってるんでしょ」


耳元で呆れた南の声がした。


「電話越しに人の心読まないでよ! っていうか、思ってないし!」


ムキになって答えたけど……嘘です。思いました。それもかなり。


「へぇー。そう」

この感じだと、信じてないな。


くそう。事実だけに、何も言えない……


「で、時間は大丈夫なの?」


「え。ああ、そろそろ行こうかな」

部屋の時計を見て、南と電話して意外と時間が経っていたことに気付いた。


「ごめん、寝てたところに。また連絡するから」


「うん。面白い報告待ってるから」


「……嫌な言い方やめてよ」


面白いって……私の人生はネタじゃないってのに。



南との電話を切って、私は誠司さんの実家へ行く準備をする。


あ、そうだ。あれを忘れちゃだめだ。


台所に行って、冷蔵庫を開けた。


……よし。ちゃんと固まってる。それにちゃんと冷えてるし。

冷蔵庫の中から、ゼリーの容器を出した。


今日のワイロ……じゃない、お土産にはゼリーを作った。

果汁と果肉を使ったフルーツゼリー。

やっぱり夏だし、冷たいものがいいよね。

って、単純な考えで、今朝作っておいた。


オレンジと、りんごと、桃と、ぶとうを二つずつ。


オレンジと桃とぶどうは一個ずつ、うちの分で置いておこう。

それ以外にラップをかけて、保冷剤と一緒にクーラーバックに入れる。


……よし。準備完了。


慶太君たち、喜んでくれたらいいな。