「その子が雛子に対して、なかなか心を開いてくれなくたって、それはしょうがないところがあると思うよ。多分、過敏になってるんだよ。赤の他人と関わりをもつのが」
南の言うことは、尤もだと思う。
慶太君からしたら、あたしなんかぽっと出の存在。
それで誠司さんと仲良く(っていっても私にとってはまだまだだけど)してたら、お父さんのことを取られたって思うだろう。
「大丈夫! そのへんはちゃんと考えて行動するから!」
私は自信満々で南にそう言った。
本当、大丈夫だよ。
ていうか、色々考えるほうが計算しててやらしい感じもするし。
だから、何とかなる! むしろする!
「ふーん……まあ、雛子なりの考えがあるんだったらいいんじゃない? せいぜい空回りしないようにね」
なんか引っかかるような言い方だけど、これはいつものことか。
「うん。……あ、今から誠司さんの実家に行くんだ」
「え、そうなの? また?」
「うん、まただね」
そう。
この間(っていうか、ぶっちゃけ三日前だけど)郁子さんとの約束の時間から思いっきり遅れてしまって、結局Tシャツだけを受け取ってすぐに帰った。
それを残念に思ってくれた郁子さんが『また来てね』って言ったんだけど……
それがこんなに早いとは夢にも思わなかった。
まあ、慶太君達と仲良くなろうって計画のある私にとっては都合いいんだけど。
「あ、今日慶太君と会って、ちゃんと仲良くできたら、もう何の問題もないでしょ」
南が不安要素になるようなことばかり言うから、私は対抗するように言った。


