私だって、何も考えていないわけじゃない。
さっき南が言ったように「親をオトすにはまず子供から」と言えばいやらしいけど。
やっぱり、誠司さんにとって子供っていうのはやっぱり大きくて。
でも、もし誠司さんと付き合うことになったとして、子供のことをネックにして付き合いたくはない。
よく昼ドラとかであるような、結婚相手の前の奥さんの子供を疎ましく思うとか、そんなドロドロした感情を持ちたくはない。
誠司さんに私のことを見てもらいたいと思うのと同じに、子供達にも私のことを好きになってもらいたいと思うし、私も好きになりたい。
「ふーん……」
電話の向こうで、南はくぐもった感じの相槌を打つ。
何、また眠いの? って思ったら違った。
「それは別にいいと思うけど、あんまり自分の感情に任せて突き進まないようにね」
予想外に真剣な声で南は言った。
「え……」
そのギャップに私はついていけない。
「その誠司さんの子供。特に上の子は、難しいよ。中途半端な気持ちで接してたら、一生の傷になるかもしれないから」
「どういう意味?」
「だって、考えてもみなよ。実の母親が小さい時に出て行って、二番目の母親は亡くなって……まだ幼稚園児だっていうのに、母親っていう立場の人間がいなくなるって経験を二回もしてるってことでしょ?」
「あ……」
そうか……
慶太君は……誠司さんと同じように、大事な人の別れを経験している。
慶太君が、どの程度のことを、どこまでをちゃんと認識しているかどうかは分からないけど……
一番母親が必要な時に、二度も母親をなくしている。
たった四年の人生の中で、まだ小さな体で、まだ未熟な心で、大きなものを受け止めるなんて、大人でさえ難しいのに……


