「まあ、それは分からなくもないんだけどさ。自分の生活環境にも関わってくるから」


「うん……?」


「でも雛子はさ、順番逆じゃない? いくら子供を手なづけても、肝心の誠司さんが雛子のこと好きになってくれなかったら意味ないでしょ?」


「それは……そうだけど……」


確かに、南の言うことはもっともだ。

でも、ちゃんと考えだってある。


「だからこそだよ! 誠司さんは、多分、子供がいるってことで私の方を見てくれてない気がするの。今まで教えてくれなかったくらいだし」


「うん。それで?」


「だから、私が子供達と仲良くできたら、誠司さんもそんなの気にしないでよくなるじゃん。そしたらちゃんと私のことを見てくれるかなって」


「ふうん……」

南の反応はやっぱりちょっと薄いような……まあ、いつものことだけど。


「要するに、親をオトすにはまず子供からってことね」


「……そんな嫌な言い方やめてよ」

たしかに、言い換えればそうなんだけどさ。


「でも、大事なことでしょ? もし誠司さんと付き合うことになっても、子供に懐いてもらえなかったらさやっぱりうまくいかないだろうし!」


「ふうん。結局、付き合うってことまで考えることにしたんだ? この間ははっきりしない風だったのに」

南は、前に会って話したことについて言っている。


あの時は、確かに、私に迷いがあった。

誠司さんと付き合うということが具体的に想像できなかったから、どうしたいのか、分からなかった。

でも、今はちゃんと決めてる。


「うん。もう、ここまできたら、とことんやってやろうっていうか……目指せ! 誠司さんのお嫁さん! みたいな?」

南には見えないと分かっているけれど、私は気合の意味をこめて左手でガッツポーズを作っていた。


でも、私はそうやって決めた。

やっぱり、誠司さんと一緒にいれたらと思う気持ちが一番だから。