「ちょっと南聞いてー」

私は電話に出た南に開口一番に言った。


「何よ」

南は何故かテンションが低かった。


「何でそんなそっけないの?」


「そっけないってね。あんた、何かと思いながら電話出た相手がそんなテンション高かったら引くわ」


「引くって……ひどい。せっかく南に報告しようと思って電話したのに……」


「はいはい。……で?」

南は全く乗り気でない感じだったけど、私は昨日のことを話した。


昨日あったことをざっくりと。

そして、慶太君が私に心を開いてくれたんじゃないかってことを。


「へー」

やっぱり南の反応はそっけない。


「へーって……そんだけ?」


「十六点」


「は?」


何? 何が十六点?

私が何も言えないでいると、南は電話の向こうでため息をついた。


「わざわざ電話してきて、やたら浮かれてると思ったらその程度の話? 誠司さん絡みの話だろうとは思ったけど」

そこまで言って、南はまた大きなため息をついた。


「……何で今日はそんな冷めてるの? せっかく南に報告しようと思ったのに、その程度って」

ちょっとこれは悲しいよ。

誠司さんのことを言ってるのは南だけなのに、肝心の南の反応がこうなんて。


「あのねえ。こっちは昨夜オールで今日提出のレポート作ってたの! それで五時からバイトだからちょっとだけ寝てたのに、電話で起こされて、しかもその相手が妙なテンションなんだからこっちは対応できないっての!」

南の声が更に不機嫌そうになった。

そうか。不機嫌の原因はそれか。


「ごめん、そうだとは知らなくて……」

確かに、南の都合を聞かずに一方的に喋ったのは私だし。


「いいけど。目、覚めたし。それで? 何で雛子はそれに喜んでるの?」


話が私のことに戻ったみたいだ。


「何でって……話聞いてた?」


「聞いてたわよ。誠司さんに車に乗せてもらったんでしょ?」


「ちっがーう! その前! 誠司さんの子供の慶太君とキャッチボールした話!」

どうやら起きぬけでちゃんと聞いてなかったらしく、私はまた南に説明するはめになった。