もうすぐ誠司さんの実家に着くという時だった。
見覚えのある車が私の横を通り過ぎた。
見覚えがあるといっても、シルバーの乗用車なんてたくさんあるから、すぐにはどういう車ということは分からなかった。
車は、私の五メートルほど前で急停車した。
どうしたんだろう、と思っていたら、運転席の窓から頭が出てきて、こっちを振り返った。
「あ、やっぱり。雛ちゃんだ」
その顔を見て、私は驚いた。
「誠司さん!?」
私は慶太君の重みも忘れて車まで駆け寄った。
見覚えがあると思ったら、誠司さんの車だったんだ。
「誠司さん、今日はもう仕事終わったの? それに……車?」
運転席の隣に立って私は誠司さんに聞いた。
誠司さんは仕事の日は実家に車を置いてるはずなのに……
「うん。今日は店じゃなくて、専門学校の特別講師としてかり出されたんだ。だから、今日は車で行って、そのまま直帰」
「へー。そうなんだ」
誠司さんは、今日みたいに、専門学校の特別講師として行くことがあるらしい。
現役の美容師として、こういうのも仕事の一つなんだって。
大体は平日のお店の休業日にあるらしいけど、たまに今日みたいに店休でもない日にあるんだとか。
そういえば、昨日はメールしてなかったから知らなかったな。
社会人で、まだ私の彼氏ってわけでもない誠司さんとは、毎日メールをして連絡をとってるってわけでもないから。
「雛ちゃんは学校の帰り……って、慶太!?」
誠司さんは私の背中にいる存在に気付いて、目を丸くしていた。
「え!? 何、どうしたの? 何で慶太が雛ちゃんと?」
ひどく驚いた様子で誠司さんは私と慶太君を見比べている。
「あー、うん。ちょっと公園で遊んでて……遊びつかれて寝ちゃったみたい」
「そうなの……? ああ、ごめん! 乗って。送るから」


