「あ、あのー……っ!?」



話し掛けようと側に寄ったとき、あたしは見えてしまった。



なんと、彼の額には一本のツノのようなものが生えていた。

そして口元には鋭い牙に、その牙から伝い落ちる赤黒い液体。



あたしは動くことができなかった。


…しかし。




「……おい」

「ぁ、…」

「…お前人間か?」



鋭い目を光らさせ聞いてくる彼に、あたしは小さく頷いた。



「そうか」

「…っ」



そう言うと彼はこちらに向かって歩き出した。



う、うそ…



「…」


彼は手を伸ばしてきた。

よく見ればその手には口元に付いてるものと同じ、赤黒い液体が指先を伝いポタポタと落ちていた。



「や、やだ!こっちに来ないで!!」