「兄さん…」


「なんだい?」


翔は、下を向いたまま俺に言った。


あぁ…

顔を上げて欲しいなぁ…


可愛い翔の顔を見たいよ…


「兄さんは、本当に父さんを殺したの…?」


俺の願いが叶ったのか、翔は顔を上げて真っ直ぐ俺を見てきた。


「答えてよ、兄さん…

兄さんが本当に父さんを殺したの…?」


翔は、今にも泣き出しそうな顔で言った。


翔…

記憶が戻ったんだね…


悠真くんたちは、翔に気を使ってか父さんのことは言わなかった。

翔は、記憶が戻り今俺にこんな質問をしているとしか考えられない。


「いきなり、どうしたんだい?

なんで、そんなことを言うのかな?」


誰かが翔に変なことを言ったのか…?

普通なら、翔は迷わず俺を殺しにかかるとこなのに…


「兄さん…

俺、兄さんのこと好きだよ。


たった一人の兄弟なんだから…」


翔が…

翔が俺を…好きって…!


「だから、失いたくないんだよ…

父さんが死んで、兄さんまで死んだら…
俺は、一人ぼっちだ…

一人は、寂しい…
一人は、辛いよ…

兄さん。お願いだから…
本当のこと言ってよ…


俺、兄さんを…

家族を疑って殺したくないよ…っ!」


翔は、泣いた。


翔が本当に悩んでいて、ツラいって分かる。

翔は、誰よりも家族想いで優しいもんね…


だから、翔…

俺は、そんなお前が好きだからこそ………