「え、っと…」
『どこにどこに?あ、デートだ!前にまだそういうんじゃないって言ってた相手だ!』
「いやぁ…」
その人ではなくて、と言えば変な感じになるし、デートかどうかも分からない。
「ちょっとご飯に行くだけなので。」
『デートじゃん。食事デートじゃん。』
キャスター付きの椅子をコロコロと転がして私の傍まで寄ってきた倫子さんはやけに目を輝かせている。
「デートなんですかね…。でも私、」
青井先生のことが好きなわけじゃない。
『でも?』
「着て行く服が、なくて。」
だけどさすがにそんなことは言えなくて、とっさにごまかす。
青井先生は、何を思って私を誘ってくれたのだろう。
『じゃあ私が選んであげるから、うちで買ってけばいいよ。』
なぜか私よりも張り切っている倫子さんが腕まくりをしながら立ち上がる。
「え、これですか…?」
そうして選んでくれたのは、普段私が着ないようなアイボリーのニットとボルドーのフレアスカート。



