白い海を辿って。


先生の仕事が休みの日、私の仕事が終わってから会うことになった。


待ち合わせは、家の近くのコンビニ。

話すのは、先生の車の中。


どこかに出かけて誰かに見られるといけないという私の心配を、先生は今回も守ってくれていた。


見られてはいけない立場は、変わっていないということ…?

考え始めるとキリがなくて、その日は時間が経つのが遅くて仕方がなかった。


会いたい、早く。

だけど、怖い。

先生の顔を見ることが。

先生の話を聞くことが。


仕事が終わって帰宅すると少し考えて服を着替えた。

先生にしか会わないけれど、先生にしか会わないからこそ少しでも綺麗な自分になりたかった。


日が沈み始めた秋の夜に、先生の黒い車が溶け込んでいる。

助手席の窓をコンコンとたたくと、先生がロックを解除してくれた。



「こんばんは。」

『こんばんは。久しぶりだね。』


先生はいつもと何も変わらない調子だったけど、少し痩せたようにも見える。