『あぁ、聞いちゃいました?』
返ってきた声は明るいままで、だけどそれが滝本さんの精一杯の強がりだと気付く。
『って、どこまでですか…?』
その精一杯はすぐに不安気な声になって、俺の後悔を一気にかきたてる。
さっきの明るい表情から一転して俯いてしまった滝本さんを見て、今日はまだ始まったばかりなのに何をやってるんだと自分が嫌になった。
それに、話すのはまた今度でいいとこの前言ったばかりではないか。
踏み込み過ぎてごめん、と謝ったばかりではないか。
「ごめんね。いいんだ、今じゃなくて。」
慌ててそう言うと、一瞬救われたような目をして、窓の外に視線を戻した。
…こんな言い方をしたら、やっぱり今は話さなくていいけどいつか話せと言ってるようなものだ。
「はぁ…。」
『あの、ごめんなさい。』
「え、あ、違う。違うよ、今のは自分のことが嫌になって出た溜め息だから。滝本さんのせいじゃないから。」
無意識に吐いてしまった溜め息が聞こえていたようで、謝らせてしまった。
滝本さんに謝らせてどうする。
本当に、つくづく自分が嫌になる。



