白い海を辿って。


行き先は、先日話し合って映画を観に行くと決めていた。

彼女は人混みが苦手らしく、テーマパークや観光地よりも静かなところを希望した。

人酔いしちゃうから、と言ったときの少し寂しそうな声を思い出す。


晴天の下、静かに時間が流れる。

俺たちが再会した映画館ではなく、少し遠くにある映画館まで車を走らせていた。



「滝本さん。」

『はい?』


窓の外を眺めていた彼女の横顔に声をかけると明るい声が返ってきて、明るくはない話をしようとしていた俺の胸が少し痛む。



「昨日、教習所の早見先生と話したんだけどね。」

『あぁ、早見先生!懐かしいなぁ、いろいろ話聞いてもらってました。』

「そうみたいだね。で、滝本さんのこと元気なら良かったって言ってたよ。」


できるだけいつも通り、何もなかったようにと心がけるけど上手くいかない。

俺よりも滝本さんのことを知っている早見さんに嫉妬しているのかもしれない。



「それで少し、話を聞いたんだけど…」


そんな思いが俺を焦らせて、思わずそんなことを言ってしまう。