『あっ、』
ドアを閉めた彼女が、驚いたように俺を見た。
「どうかした?…あ、」
彼女と向き合って、思わず俺も声を出してしまった。
彼女がネイビーと赤のチェックシャツを着ていたからだ。
俺のチェックシャツと完全に被っている。
『被っちゃいましたね。』
「うん、すごいね。」
彼女の方はワンピースで、チェックの柄が大きくなっていたりデザイン性がある。
至って普通な俺のシャツとはそこが違うけれど、柄が被っているのだからペアルックだと思われてもおかしくない。
だけど出会って数秒、まさかの出来事に顔を合わせて笑い合うと緊張がほどけた気がした。
『先生って私服オシャレですよね。』
「え、そうかな?」
彼女のとても素直な声を聞いて、素直に喜べない自分に戸惑う。
妻が選んだものばかりが入っているクローゼットが、今となってはとても大きな負担になっていた。



