『僕は覚えているだけじゃなくて、もっと知っていきたいって思う。』


先生にこんな風に言ってもらえるなんて本当に嬉しい。

嬉しいのに、嬉しいはずなのに、先生に話せない私の一面は嬉しい気持ちよりもずっとずっと大きくて重い。



『本当は、本当の滝本さんは、俺じゃなくて高嶺くんや青井くんが見てた滝本さんなんじゃないかって思ったら…心配なんだ。』

「え?」

『2人が言うように、不安なことを誰にも言えずに全部自分1人で抱え込んでしまってるんじゃないかって。』


大当たりだった。

悩みや不安のほとんどは、誰にも言えずに自分の中に溜まっていく。



『だから教えてくれないかな?もっと知りたいんだ、本当の滝本さんを。』

「私も、先生にもっと自分のことを知ってほしいって思います。でも…」


ずっと自分が抱えてきたことを、この人なら話せるかもしれないと思った。


でも、



「話すのは、また今度でもいいですか。」


まっすぐに先生の顔を見ることができずに俯いてしまう。

こんなにも信頼できる人を信頼できない自分が嫌で嫌で仕方なかった。