白い海を辿って。


岸井の作り話?

人違い?

でもこの状況で嘘をついたところでもうどうにもならないし、岸井は青井くんに会ったこともある。



「滝本さんはもう大丈夫だから。お前が心配することじゃない。もう二度と滝本さんには会わないって誓え。」

『そうだ!誓え!』

『うわっ』

「うわっ」


背後から突然椎野さんが怒鳴り、男2人の情けない声が響いた。

振り返ると、滝本さんは車に戻っている。



『誓え!誓わないとな、また私がどこからでも追ってきて蹴飛ばすからな!てか次はそれだけで終わると思うな!』

「椎野さん!」

『分かったよ…もう二度と会わない。約束する。』


額に手を置きつぶやいた声に嘘はないと、俺にも椎野さんにも伝わった。

椎野さんの飛び蹴りと説教がかなり効いたらしい。


程なくして警察が来て、以前にもこういうことがありながら止められなかったことを事務的に謝ってから岸井を連れて行った。

岸井は椎野さんに蹴られた肩や転んだときにぶつけた腕をさすっていたが、椎野さんの眼圧に負けたのか警察には何も言わなかった。