『お前な、なに別れた彼女の後つけ回してんだよ。彼女だけじゃなくてその彼氏まで。自分がどんだけ恥ずかしいことしてるか分かってんのか?』
『すすすすいません。』
『あ?謝って済むと思ってんのかこら!』
「椎野さん!」
手を出すなと言った声は届いていたようで、すっかり路上に倒された岸井の頭の横に両手を叩きつける。
慌てて引き離して椎野さんを立たせたけれど、岸井はそのまま起き上がろうとはしない。
『黙ってないで説明しろ?今なんでここにいるのか!』
『明日実に会いたかったんだよ…。』
空に向かってつぶやかれた声は小さく、後ろにいる滝本さんまで届いたかは分からない。
『明日実が幸せそうだったから悔しくて…なんかあの彼氏も気に入らないし。』
『だからってこんなことして何になるの?お前さっき私に蹴られて分かったでしょ?人に傷つけられんのってこんな痛いんだよ!』
「椎野さん、もういいから。」
俺は椎野さんのように素直に怒りを表には出せないけれど、胸の中でふつふつと怒りが湧きあがってくる。



