「何やってんだよ!」
『だって!やり方が汚いんだよこいつ!こそこそ後つけたりすんな!』
「ちょっと落ち着いて!」
幸い周囲に歩いている人はおらず、今の飛び蹴りは誰にも見られていなかったようだ。
突然蹴飛ばされた岸井は何が起きたのか理解できていないようで、うずくまりながらこちらの様子をうかがっている。
『理瀬さんは滝本さんについててあげてください。私こいつシメとくんで。』
「シメなくていいから!すぐに警察呼ぶからもう手出すなよ!」
『お前な!』
俺の声など聞こえていないのか椎野さんはもう岸井に馬乗りになっている。
あぁぁもう。なぜこんな状況になっているのか、滝本さんはどうして俺に電話してきたのか、確認したいことは山ほどあるのにこんな状態では何も聞けない。
とにかく早く警察を呼ばなければ。
『先生…?』
通報を終えたところに滝本さんが不安そうに車から降りてきた。
目の前の光景を見て固まっている。
…そりゃそうだ。



