これまでずっと、普通でいようと頑張ってくれていたのだろうか。
そのままでいいと沢山伝えてきたけれど、そのままでいると彼女はこんなにも脆かったのだ。
だからそれを隠して、普通でいようとしてきた。
「ごめん…気付いてやれないことばかりで。」
『謝らないで。』
俺はずっと自分のことばかりだった。
自分の想いが溢れ過ぎて、彼女の不安に何も気付くことができなかった。
「大丈夫か。」
どのくらいの時間そうしていたのだろう。
ようやく彼女の呼吸が落ち着いたように見えてそっと腕をほどいた。
『うん。ありがとう。』
「何か温かいものでも淹れるな。」
彼女をソファーまで連れて行き、ひとりでキッチンへ戻る。
お湯を沸かしている間に割れたお皿を片付けて、彼女が切っていた野菜はラップにくるんで冷蔵庫へしまう。
そのまま冷蔵庫の側面に貼りつけてある宅配ピザのチラシを取ると、紅茶と一緒に彼女へ持っていく。



