『なぁ、青井。』
そんなことを考えながら教官室の前まで来ると、思いがけず真剣なトーンで高嶺さんから呼び止められた。
『お前、本気なんだよな?』
「え?」
『滝本さんのこと、真面目に考えて付き合ってるんだよな?』
「当たり前じゃないですか。」
さっきまでの茶化すような聞き方ではなく、その表情は真剣そのものだ。
彼女とのことは、早見さんにも同じように確認された。
全く信用されていないけれど、それは同じだけ彼女が心配されているということだ。
「本当に真剣に付き合ってます。」
『だったらいいんだけど…。滝本さんってたぶん何かあるんだろ?何かは知らないけど。』
「それは、」
『早見さんに気をつけて見ててあげてほしいって言われてたから。自分が担当するとかえって気を張らせてしまうからって。』
そうだったのか。
彼女の事情を知っている早見さんが担当すれば、彼女は早見さんに余計な気を遣わせないように無理をするだろう。
早見さんはそこまで考えてくれていたんだ。



