白い海を辿って。


『気になるな~。』

「本当に全部食べていいのかなって思っただけ。」

『全部食べていいよ。』


優しく微笑む彼を見て、言わなくて良かったと思う。


いつだって自信がない。

だけど私を見てくれる彼の目に嘘がないことは、私が1番分かっている。


もう気にしないと自分に言い聞かせて、残り少なくなったケーキに目を落とした。



『明日実。』

「なに?」

『気になることがあったら言えよ。』

「うん。」


彼はそれ以上は追及せず、また穏やかに微笑んだ。

今日は朝から天気が良くて、海も遠くまで見渡せる。

こんな風に出かけられる人がいること、またこんな風に誰かを好きになれたことを、素直に嬉しいと思った。



「遠くに行きたいな。」

『行く?旅行とか。』


無意識につぶやいた一言に彼が嬉しそうに反応する。

なんでそんなことを言ったのか自分でもよく分からなかったけれど、彼の提案はとても魅力的に感じた。