『明日実。』
すぐに後ろからすっと近付いて来た彼は、なぜかハンカチを手に持っていた。
『落としただろ?今あの人が渡してくれた。』
「本当だ、ない。」
バッグの中を見るとハンカチがなくて、そういえば出がけに慌ててポケットに入れていたんだと思い出す。
彼があの人と言った方を見たけれど、人に紛れてどの人なのかは分からなった。
お礼を言えなかったことを残念に思いながらも、ハンカチが無事に戻ってきて安心する。
『気をつけろよ~俺のなんだから。』
「ごめんごめん。」
『適当だな~。』
ちょうど出口に着いたところで、彼がさりげなく手を握る。
その手を握り返して駐車場へ歩き出し、すぐに立ち止まって後ろを見た。
『どうした?』
「なんでもない。」
『また何か落としたか?』
「ううん。はるくん目立つね。」
え?と不思議そうな声を出す彼の手を引っ張って、なんとなく早足で車へ向かった。



