「はるくーん。私のハンカチどこー?」
『え?知らないよ。』
それから、週に何日かを彼の家で過ごすようになった。
1日が2日になり、たまに3日程いることもある。
一緒に暮らすことを今はまだ考えられないと言ってから3ヶ月が経ち、季節は春になった。
同棲にはまだ踏み切れいていないけれど、付き合い自体はとても穏やかだ。
「えぇ、どこやったかな?」
『俺んとこに一緒に入ってるんじゃね?』
彼の家に置いておいたハンカチを探しているうちに出かける時間が迫ってきた。
今日は私の好きなイラストレーターの展覧会を見に隣県の美術館へ行く予定だ。
『ないな~。』
「あれ、置いてなかったっけ?」
『おーい。もう俺の持ってけよ。』
結局見つからないまま彼が渡してくれた男性用のハンカチをバッグに入れて、慌てて家を出た。
『ハンカチってあの青いやつ?』
「そうだけど。」
『それ俺が昨日使ったわ。』
「え~。」
長いドライブの間もずっと平和な時間が流れている。
付き合い始めて半年が過ぎ、気遣いや遠慮がどんどんなくなってきていた。



