『あのときこうしてればとかそんな過去のことを考えるより、今とこれからのことを考えていてほしい。』
静かな公園で、彼と向き合って話していると少しずつ冷静さを取り戻してきた。
そうだ、私には彼しかいないんだ。
彼がいてくれるだ。
「ごめんなさい。久しぶりに会って動揺してた。」
『俺は明日実が好きなんだぞ。誰にも渡したくないくらい。優しくて、自分のことよりも他人のことを考えられる明日実が。』
「はるくん…。」
『俺はいなくなったりしないって言っただろ?』
握っていた手を優しく引き寄せて、ぎゅっと抱きしめられる。
初めてのデートで水族館へ行ったときにこの腕の中で感じた安心感。
「ありがとう…。私もはるくんのことが大好き。」
自分の全てを話して、知られてもいいと思えた人だ。
無条件に信じて頼ることのできる大切な人。
その腕のぬくもりの中で、先生の存在と気配が少しずつ過去のものになっていくのを感じていた。



