白い海を辿って。


最近ちょっと寂しそうだった。

寂しいという感覚を思い出してしまったことを、見透かされていた。



『けどやっぱり平気なんですね、先生は。クリスマスに1人で家に帰っても。あ、1人になりたいから離婚したのか。』

「そうだね。」


1人になりたかった。

独身になって、滝本さんを迎えに行くつもりだった。

だけど実際に独身に戻ることは、思っていたよりもずっとひとりだった。



「俺はもう誰のことも好きにはならない。」

『そうやってシャッター下ろせば楽だと思ってるんですか。』

「楽だとかそういうんじゃなくて、本当にそうだから。』

『バツイチの人との方が幸せになれるって、私は思いますけど。』


変なことを言う子だ。

俺にはそんなこと…



『もう失敗したくないって、大事にするから。』

「そんなこと言ってると変な男に引っかかるぞ。」

『変な男の話じゃなくて、理瀬先生の話です。』


俺の話。

俺が、また誰かを幸せにできるとでも…?