白い海を辿って。


青井くんが俺と滝本さんとのことを気にしていると早見さんから聞いたとき、ちゃんと話そうと思った。

早見さんは2人のことを知っていて、俺に繋ぎとめておけと言ったときとは違って応援している風でもあった。


あのとき、俺は異動することを決めたのだと思う。


電話は繋がらなかったけれど、彼女が幸せでいると知って。

離婚前から実際に離婚するまでを変に巻き込んでしまったことがずっと心に引っかかったままだったから。

ひとりじゃなくて、安心した。


青井くんはきっと真面目に真剣に滝本さんと付き合っているのだろうし、滝本さんもそんな青井くんを信頼しているということだ。

そしてそんな気持ちは、青井くんと話して確信に変わった。


"渡しません、彼女は絶対に。”

そうはっきりと言い切った表情から本当に失いたくないという気持ちが見えて。


失うことが怖くて手を放した俺とは違って、青井くんは失いたくないという感情に素直だった。