あの人に変化が起き始めたときのことを思い出していた。


刺激してはいけない。

頭のどこかでそんな風に思って、彼はあの人とは違うのに、そんなことを思った自分が嫌になる。


私が彼を不安にさせてしまうようなことをするから、彼は信じられなくなって我を忘れてしまうんだ。

私は彼のことが好きだし、先生のことはもう終わったこと。

言葉にしなくてもそう伝わるくらい、彼との日々を重ねていきたいと思っている。

日々穏やかに、波を立てずに生活していればきっと大丈夫。



『ただいま。』


家に帰ろうかと思いながら、結局彼が帰宅するまでそのままでいた。

今日は休みだけど、とくに予定はなかった。



「おかえりなさい。」

『びっくりした。帰ってると思ってたから。』

「うん。ごめんね、なんか帰りそびれちゃって。」


作っておいた夕食を温めようとキッチンへ行くと、彼も後を追ってくる。

今朝空っぽだった冷蔵庫は、スーパーへ行って食材で満たしておいた。