避けられているわけではないと思う。

挨拶は普通に交わすし、他の教官たちと数人で会話をしているときはいつもと変わらない。

ただ2人で話したのはあの日が最後というだけだ。


あの日見た理瀬さんの表情は今も脳裏に焼き付いている。

とても悲しい話を聞いたような、それを必死で受け入れようとしているような。


あのとき俺が動揺したのは、そんな理瀬さんの表情だけじゃなくて、その後の早見先生の表情も大きかった。

2人に何かあったのか、思わずそう聞いてしまった俺に見せた不快そうな顔に後悔が押し寄せた。


今の彼女だけを見ていればいい。

その言葉を信じようと思った。


今の、俺の傍にいてくれる彼女を。


なのに、そう信じたそばからあんなものを見てしまった。

彼女のスマホに表示された着信を告げる名前。


"理瀬先生“

やっぱり今も連絡を取っていたと思い込んでしまったのか、考えるよりも先に手が伸びていた。