『あぁ、やっと起きてきた。』
ゆっくりと階段を降りると、妹が呆れたようにつぶやく。
『おはよう。よく眠れた?』
「うん…ごめんなさい。」
窓の外は暗くて、彼の言葉に母と妹が笑う。
スマホを握る手に、ぎゅっと力を込める。
『少し外で話してきてもいいですか?』
『どうぞどうぞ。』
『少しと言わずごゆっくり~。』
母と妹に見送られて外へ出ると、静かな夜の空気に深呼吸する。
今日の朝まで一緒にいたはずなのに、随分と長い間会っていなかったような気がする。
『お腹空いただろ。何か食べる?』
「ううん、大丈夫。」
『そう?でも俺お腹空いたからコンビニ行くな。』
何も変わらない、いつもの彼。
そんな彼を見ていると、全てが私の想像で勝手な被害妄想なのかもしれないと思えてくる。
でも、確かめなきゃいけない。
「ごめんね、待たせちゃって。」
『いや、俺の方こそ今日はごめん。昨日も…本当はよく寝られなかったんじゃないか。』
彼の車の助手席で、流れていく景色をただ眺める。



