しばらく雑談をしていると教習が終わるチャイムが鳴って、続々と他の教官が戻ってくる。
『昨日理瀬さんが滝本さんに会ったらしいっすよ。』
『へぇ、滝本さんか。元気にしてるのかな。』
俺も次の教習の準備をしていると、高嶺くんが話す声が聞こえた。
やはり当然のように滝本さんを覚えていたのは、俺より7年先輩で俺が1番慕い尊敬している早見(ハヤミ)先生だ。
『元気だったんすよね?』
「あぁ、うん。普通に。」
『そっか。それは良かった。』
話を振るだけ振って先に行ってしまった高嶺くんの代わりに早見さんが答える。
『普通に元気か…滝本さんにとってはそれが1番だもんな。』
「え?」
早見さんは確かめるようにそう言って、俺に同意を求めた。
当たり前のように話す早見さんの話についていくことができず言葉に詰まる。
他の教官が話す彼女の話題に、俺は何ひとつ答えることができなかった。



