「そんなに大したことじゃないんだけど、昨日偶然滝本さんに会って。」
『えっ?』
本当にそんなに大したことじゃないように何気なく言うと、2人同時に聞き返された。
やっぱり忘れてるか…。
「覚えてる?」
『もちろん、滝本明日実さんでしょ?俺担当でしたから。』
高嶺くんが思っていたよりもあっさりと、当たり前のように言ったので驚いた。
『俺ももちろん覚えてますよ。元気でした?』
青井くんも忘れていた様子は全くない。
2人ともそんなに記憶力が良いのかと感心してしまう。
「元気そうだったよ。車もそれなりに乗ってるみたいだし。」
『そっかー。俺密かに心配してたんです、大丈夫かなって。』
『でも運転上手じゃなかったですか?ちょっと危なっかしいとこもありましたけど。』
彼女のことで話が弾む2人を見ながら、複雑な気持ちになる。
大人しいけれどとても良い子である彼女のことは、俺だけがちゃんと覚えているような気がしていたから。



