「お兄ちゃん、何だったの?」
『明日実をお願いしますっていうご挨拶。』
車へ戻った彼に聞くと、そんな答えが返ってきた。
お兄ちゃん、そんなこと言ってくれたんだ。
『いい家族だな。』
「うん。」
迷惑ばかりかけていると思っていた。
だけどいつだって、皆私の味方でいてくれる。
そのことに気付くことができたのも、やっぱり彼のおかげだった。
『明日実?』
彼がシートベルトを締める前に助手席からその胸へ飛び込む。
どれだけ強く抱きしめても伝わらない気がして、ただ必死にしがみつく私の頭を彼がなでる。
『誰かに見られるぞ。』
「見られても困らない。」
そんなことよりも、今はただこうしていたかった。
見られても困らないと言った私を、彼がぎゅっと抱きしめる。
きっと本当に、とても緊張していたんだと思う。
好きだと思う以上に愛おしいと思う気持ちがこみ上げて、こんなに近くにいるのにもっと傍へ行きたかった。



