「あのさ、」
『お疲れさまでーす。』
それでもやっぱり彼女の話をしたい、と思って声を出したところで扉が開いた。
今度入って来たのは2年後輩の青井(アオイ)先生だ。
『あれ、お前も空き?』
『いやいや、高速から帰って来たんすよ。』
『あー それはお疲れ。』
普段の教習よりも数倍体力を使う高速教習から帰ってきたと言う青井くんは少し疲れた表情で高嶺くんの隣に座った。
そんな青井くんを見ながら、青井くんは彼女を覚えているだろうかと先程と同じことを考える。
所内で決まっている“生徒をさん付け”ルールや“親しくなりすぎるな”ルールは青井くんのためにあるようなものだ。
長身で明るい茶髪を無造作にセットしている外見と、はつらつとした明るさと優しさ。
本人はそんなに自覚していないようだけど、青井くんを好きになる女子生徒は多かった。
『そういえば理瀬さん、さっき何か話そうとしてませんでした?』
「え、いや…」
高嶺くんに突然話を振られ、話すなら今かなと思う。



