玄関を開けると、もう家の前に青井先生の車が待ってくれていた。
人目を気にしてコンビニまで歩かなくてもいいことが、少し嬉しくて少し寂しかった。
『こんばんは。』
私に気付いた青井先生が中から助手席を開けてくれる。
白くて大きな車は中も広々としていて、さわやかないい香りがしていた。
「よろしくお願いします。」
『そんな硬くならなくていいから。』
ふわっと笑う青井先生の笑顔は、こちらの緊張も和らげてくれる。
『可愛いね。』
「えっ?」
『服。今までと違う感じ。』
私が言われ慣れていない“可愛い”を言い慣れているようにサラッと言う青井先生に、和らいだ緊張がまた戻ってくる。
ハンドルを両手で抱えるように軽くもたれながら顔だけをこちらに向けて、もう1度イタズラっぽく笑うとゆっくりと車を発進させた。
「車、青くないんですね。」
私からも何か言わなければと思って出てきたのは、そんなバカみたいにつまらないことだった。



