「今日は随分遅かったな」
「・・・、クラスメイトに村を案内してもらっていました。」


夕食の席で軽く好摩の話を出す。

あの後は色々大変だった。最初は案内を辞退したものの、「遠慮するな」と半ば強引に好摩に連行された。

「門限まで時間はあったが、ここは都会とは違う。日が暗くなれば、野性の動物だって出るんだ。あまり遅くまで外出するのはよしなさい」

「すいません、気を付けます。敦也さん」

敦也さんというのは、目の前の、俺の養父となった男だ。彼は遠縁の親戚でもなければ、俺の両親と関わりがあったわけでもない。

経緯は知らないが、それにも関わらず、金銭的な価値も、血の義理も無い俺を引き取った奇特な人だ。

「・・・、学校はどうなんだ。上手くいきそうか?」

「大丈夫です、・・・、クラスメイトも親切なので」



その後も会話というよりは状況報告のような話題が続いた。元より、敦也さんは寡黙な人なので、会話らしい会話はあまりしたことがない。