かぼちゃの君






うそ……。

私の左側を通ったとき、私の目に入ったのは、瓜先の左の首筋にあった3つ並んだほくろ。

ああ、そうか。
天野先輩のとき感じた違和感はこれか。

一昨日みた天野先輩の3つ並んだほくろの位置は、右の首筋だった。

だけど、去年私が見たのは、左側。


ああ、もしかして。


「瓜先!」

「あー?」

「どうしても、どうしても伝えたくても伝えられない気持ち、どうすればいい?」


私がそうきくと、瓜先は少し驚いた顔をして。

「なにそれ、男?」

「え、えと、一応……」

瓜先は「んー」と少し考えて。
そして、優しく笑って言った。


「女子高生にそういう大事な気持ちを言われて、困らない男はいない」


最近、きいたことのある言葉。
その言葉をきいて、わたしは、小さく吹き出した。

ほんとだね、八坂先輩。
八坂先輩の好きな人が、黒いビニール袋をマントにして、プラスチックのかぼちゃをかぶってたら、たしかに笑っちゃう。おかしいよ。