かぼちゃ君を見たのはちょうど1年前。高校1年生の時。

その日は10月31日で、ハロウィン当日。
まだ、かぼちゃ君という存在がいることを知らなかった私。

その日までに返さないといけなかった本を、放課後返しにきたのだ。
図書室は基本16時半までで、あと数分でその時間になろうとしていたから、私は走って図書室に向かっていた。

すると、角を曲がったとき図書室から出てきた人とぶつかってしまったのだ。

顔をあげて、あやまろうとしたけど、私はその人の姿に思わず目を丸くした。

ぶつかったその人は、黒いビニール袋をマントにしていて、頭にはプラスチックでできたジャックランタンを被っている。


言葉を失っている私に、その人は手を差し伸べてくれて、私は戸惑いながらもその手をとった。
そしてすぐにあたしの左側を走っていってしまったんだけど、そのときチラッと見えたのは、左側の首筋にあった3つ並んだほくろ。

見た瞬間団子3兄弟みたいって思ったからよく覚えている。


その翌日にかぼちゃ君の話をきいた時はびっくりしたけど、見たことは良子にも言ってない。
なんとなく、わたしだけの秘密にしておきたかったから。
それに、見た人もかぼちゃ君が誰かは言っていない。
私は誰かはわからないけど、自分の力でかぼちゃ君って人を見つけて、ぶつかった時の「ごめんなさい」と、手を差し伸べてくれたとき言えなかった「ありがとう」を言いたいんだ。